家族というのは不思議なものだと、臨床現場にいて改めて思います。
お互いをかけがえのない存在と感じていたり、他の誰に対してよりもそのままの自分を見せられたりする中で、距離が近いが故に傷つけあってしまうことがある。
お互いを分かりあっているようで、分かり合えていない。
気が付けば、どんな他人に対してよりも、胸の内を明かせなくなっている。
こういったご家族を臨床現場では、よくお見かけすることがあります。
家族の風通しが悪くなっていて、腹の探り合いになってしまっていて、家の中は沈黙で会話は地雷を踏む思いで交わされているのです。
「本当はこんな風に話したいわけじゃない」と個々にお話しをうかがえば、よくご家族はそれぞれおっしゃいます。
家族療法で、家族のメンバーが面接の場にそろえば、限りなく家庭に近い状況が再演されます。
しかし、そこにはカウンセラーがいることで、皆さんは若干冷静さも保たれます。
また、カウンセラーが通訳のように各自の言い分をまとめることで、次第に家族の風通しが良くなっていきます。
それは何年も空けていなかった窓が開いたように、新しい風が吹き込んでくるような様子を次第に見せていきます。
もちろん、長年の家族の習慣から、時折窓は再度閉じてしまいます。
その都度、窓が閉まっていることに気づき、なぜ窓は閉まってしまったのか、どのようにしたら調度良いのか、家の中の風通しを良くするために家族各自ができることを考えることがとても大切です。
ずっと一緒にいた家族が家族療法の中で、家族のある一側面を初めて知ることがあります。
「ずっと一緒にいたけれど、知らなかった」
ずっと一緒にいて、大切だからこそ見せられない一面があります。
でも、そのことが家族間で溝を生み出してしまうことがあります。
家族療法により、家族の橋渡しをし、お互いを思う気持ちに各自が出会えたらと思って、私は家族の皆さんとお話ししてています。